3つの治療法について
メンテナンスを怠ったせいか、あるいは治療が手遅れだったためか、理由はともあれ治療の甲斐なく抜歯せざるを得なくなるケースは、実際少なくありません。歯を失ったら、そのスペースを放置してはいけません。やがてまわりの歯や骨に悪影響が生じるからです。
そこで、失った歯を代わりのもので埋める必要があります。その代替歯といえるのが、インプラント・入れ歯・ブリッジの3つの方法です。それぞれメリット・デメリットがあるので、比較検討の上、治療に進みましょう。
当院では、とくに患者さまの「将来」のことを優先して治療プランを考えます。たとえば、40代の方で失った歯のまわりの歯にも不安要素があったなら、そこにインプラントを1本入れるよりも入れ歯にしておいたほうが、10年後、20年後のお口の状況は快適かもしれません。60代の方がインプラントにするなら、20年後、そのインプラントをどうするかなどのプランも事前に必要です。
歯科医がお口の中を診れば、たいていその患者さまの未来図を描くことができるので、健康な歯や不安な歯の存在、先々のリスクとの兼ね合いなど、さまざまな要素を考慮して方針を決めていきます。
介護の現場では、いまやインプラントも含めて口腔ケアが問題になっています。ですから代替歯を考えるとき、いまよりも将来のことを想像しながら中・長期的なプランを考える必要を強く感じています。たとえば、インプラントを土台にした入れ歯「インプラント義歯」という選択肢も、将来的にはもっと有効に活かすことができるのではないでしょうか。
3つの治療法の比較
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インプラント
・まわりの歯に負担をかけることがほとんどない。
・その1本だけの治療なので、ほかの歯を削る必要がない。
・見た目が自分の歯に近く、審美性に優れている。
・食べ物の味、食感がわかりやすい。 -
入れ歯(部分)
・引っ掛けた歯に負担がかかるので、まわりの歯の寿命を縮めるリスクがある。
・お口の中で違和感を覚えたり、痛みが出たりする場合も。
・噛む力に劣り、食感や温度を感じにくくなる。 -
ブリッジ
・支える歯が必要で、その歯を削る必要がある。
・支える歯に負担がかかって、寿命を縮めるリスクがある。
インプラント治療
インプラント治療は、身体になじみやすいチタン製の人工歯根(インプラント)を失った歯の下の顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。その後は自分の歯のようにしっかり噛むことができ、しかも美しい歯が誕生します。
インプラントを埋めるのは外科手術です。埋めたインプラントが骨になじむのに時間がかかり、自費治療のため高額でもあるので、メリット・デメリットをよく検討する必要があるでしょう。
インプラント治療のメリット・デメリット
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メリット
- 健康な歯を削ることなく、治療が可能
- 金具を使用せず、自然な仕上がりが期待できる
- 歯ごたえある食物の食感が楽しめる
- 左右でバランスよく噛める
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デメリット
- 治療期間が比較的長い
- 外科処置が必要となる
インプラントのアフターフォロー・メンテナンス
インプラントは人工物であることから免疫が働きにくいため、術後は感染などに要注意です。そこで患者さまと相談の上、早い方で1カ月後、通常は2~3カ月後に来院してもらい、特別なメンテナンスを行います。お口全体のクリーニングに加え、超音波を当てられないインプラント部分には使用可能な器具を使って清掃します。インプラント用のセルフケアの指導も行います。
費用(税込)
インプラント | 385,000円/1本 |
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入れ歯治療
歯を1本から数本失った場合には、そこを埋める形で部分入れ歯をつくり、その両脇の歯にバネで装着します。失った歯が増えていっても、入れ歯をつくり直して再治療が可能です。また、入れ歯を試してからその結果によってインプラント治療を行うという方法もあります。
全部の歯を失った場合には、総入れ歯となります。保険適用の入れ歯にも対応いたします。
入れ歯のメリット・デメリット
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メリット
- 健全な歯を削らずに補うことができる
- 取り外しができるので、お手入れがしやすい
- ブリッジでは対応できない本数をカバーできる
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デメリット
- バネで支える場合、引っ掛けた歯への負担が大きい
- 違和感を覚えたり痛みを感じることがある
- 発音しにくくなる
- 食べ物がはさまり、お口の中が不衛生に
- 取り外してお手入れしなくてはならない
- 自分の歯に比べて噛む力が劣る
費用(税込)
審美義歯(ノンスクラブ) | 110,000〜275,000円(設計や歯数で変わる) |
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ブリッジ治療
歯を1~2本失ってその前後が健全な歯の場合には、健全な歯を削って支えとし、人工歯を橋渡ししてかぶせます。前後の歯の状態など条件が揃わないと実行できない治療法ですが、状況次第では効率のいい方法です。当院では、橋渡しする歯が処置歯(治療済み)でもブリッジを選択することがあります。
ブリッジのメリット・デメリット
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メリット
- 固定式なので、自分で取り外す必要がない
- 違和感が少ない
- 口腔内の状況によってはできる限り少ない治療回数で済む
- 保険適用
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デメリット
- 支える歯を削る必要がある上に大きな負担がかかる
- 発音しにくい
- 固定式なのでメンテナンスが難しく、不衛生になるリスクがある
- 壊れたら再治療となる